悩める女性を救いたい!
当院の治療方針

当院ではこれまでに数多くの腹圧性尿失禁の治療をしてきました。今までの手術は再発があったり、効果は十分でも一週間以上の入院が必要だったりで、尿もれが重症な方にのみ手術をすすめる傾向がありました。

けれども1999年9月から日本でも保険医療の適応となった「TVT手術」は、有効率が高く再発が少ないことが特徴です。その上、局所麻酔で行えるために日帰り手術が可能で、体への負担も少なく、傷が小さくほとんど目立ちません。この手術の出現により、私たち泌尿器科医もその人の症状にあわせ、これまでよりも積極的に手術をすすめることができるようになりました。
尿失禁の手術は「QOL手術」

最近、中高年の女性は、以前に比べて大変活動的になってきていると感じます。その方たちが手術を希望される理由は、「趣味のゴルフやテニスを、尿もれを心配せずに思いっきり楽しみたい」、「町内会の一泊旅行に、大量のオムツを持たずに行きたい」など様々です。「夏に姪の結婚式があるので、薄いドレスを着て出席したい」というのが泌尿器科を受診するきっかけとなった方もいらっしゃいました。つまり尿失禁根治術は、「QOL手術」なのです。そういう意味で、一人ひとりのニーズに合わせて手術を選択して良いと思うのです。例えば、尿もれが軽度〜中等度で、骨盤底筋体操や薬物療法により日常生活での漏れはなくなったが、スポーツをする時にはパッドがはずせない、でもスポーツは頻回にしたいというような方は、手術を選択することも良いのではないでしょうか。

TVT手術体験談

10年前から尿もれの症状があり、だんだんひどくなってきて、好きな旅行にも行けなくなってしまいました。そんなとき、雑誌に尿失禁の記事が載っているのを見て、私もこれだと思い、紹介されていた泌尿器科を受診しました。とにかく1日でも早く完全に治したいという気持ちでした。局所麻酔でできるTVTという手術があると先生から聞きました。実は過去に違う病気で局所麻酔手術の経験があったので、それなら大それた手術ではないのではと思い、手術を受けることにしました。何日も入院すると人に知られてしまうのではないかと心配でしたが、1泊2日の入院で手術ができるという点も手術を受けようと思った理由の1つです。手術は1時間もかからず、翌日にはピタッと尿もれは止まっていました。傷も目立たず術後の体調もすこぶる良好です。あのパッド交換の煩わしさも解消されて、今では旅行も散歩も気持ちよくできます。精神的にも明るく、積極的になった気がします。<68歳主婦>


悩みの解決に協力します!
当院の外来には、短い方でも2〜3年、長くは20年も尿もれを悩み続けて受診される方もいらっしゃいます。尿もれを治療して快適な生活を取り戻した方々を目の当たりにしている我々から見れば、「どうして一人でひっそり悩んで、尿もれパッドで何年もがまんしているの?」と思いますが、まだまだ日本では、残念なことに「尿もれ」自体を病気と思っていなかったり、自分だけがおかしい、人に相談するのは恥ずかしいという方が大多数のようです。 このコラムを読んで、「なあ〜んだ、私だけじゃないんだ。みんなも多かれ少なかれ経験があるのに言わないだけなのね」と思って、気軽に泌尿器科に相談に来ていただけたら幸いです。悩んでいても事態は改善しません。恥ずかしいと思っているのは自分だけで、泌尿器科の外来に行けば、同じ症状の方がたくさんいらっしゃいます。一日も早くドライで快適な日々を取り戻しませんか?必ずみなさんのお悩みの解決に協力いたします。

(イラスト:乙部成未)